◆機械宇宙学科とは

I. 機械宇宙学科
II. 本学科での学習内容
III. 卒業後の活躍分野

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I. 機械宇宙学科

国際宇宙ステーションフリーダム
宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供

 人類は今その活動の場を地球上だけでなく,広汎な宇宙全体に広げようとしている. このような「宇宙時代」を迎えるとき,エンジニアには従来の地球上に限定された技術の枠を乗り越え,極限的な観点から技術開発を行う能力と宇宙的なグローバルシステムの中で技術を思考する能力が要求されている.例えば宇宙ロケット,人工衛星,探査ロボット,宇宙往還機などの最新システムの開発においては,極限的環境に対応するための材料,構造,熱,流体等の先端的要素技術が要求され,さらにはそれらを高い次元でバランス良く統合して制御するシステム技術が必要とされる.機械宇宙学科は最新の科学に基盤をおいた「宇宙に象徴される極限環境下において要求される高度の機械工学」(これを我々は「機械宇宙学」と呼ぶ)の基礎的素養に加えて,あらゆる知識を総合し,具体的な「もの」を作り上げる創造的システム開発能力と指導力・企画力・国際性などを兼ね備えた人材の育成を目的としている.



II. 本学科での学習内容

 機械宇宙学科では,これからの機械工学はどうあるべきか,また学生諸君に何を習得してもらうか,ということについて議論を重ね,以下のような理念が重要であると考えている.

  1. これからの機械工学として,エネルギー,材料物性,情報制御が重要な3分野である.
  2. すべての学問分野においてしっかりとした基礎を習得することが新しい応用分野の創造につながる.また,工学の基礎として物理などの科学を十分に習得することは必要不可欠である.
  3. 「もの」に触れることを通して,エンジニアリングセンスを磨くとともに,学習したことを実感として習得する.
  4. 機械工学の本質は様々な要素技術を総合して新しい機械システムを作り出すことである.
  5. 学生には,自分の意見を論理的に明確に述べることとともに他人の意見を正しく理解し,的確な判断を下す能力が求められている.

 このような考えに基づいて,機械宇宙学科では1年次から2年次にかけて,すべての学問分野の基礎として数学,物理を学習する.さらに2年次では,機械力学,材料力学,流体力学,熱力学などの機械工学の基礎(いわゆる4力)を習得する.これらの学問体系をしっかりと理解することは,以降の学習において必要不可欠であると考えられるので,適宜,演習や宿題を課すことで理解の一助となるように工夫している.2年次後学期から3年次にかけては,機械工学として重要な弾性力学,塑性力学,破壊力学,熱物質移動論,環境工学などを学習する.以上により,機械工学の学問体系を習得することになる.

 次の特徴として,本学科は「ものに触れる」こと,「新しい機械システムを創造する」ことを重視しており,このため学生実験や創造性教育に力を入れている.たとえば,2年次前学期から3年次後学期にかけて,機械創造基礎,メカトロニクス,機械創造,機械宇宙設計製図と毎学期「ものつくり」をおこなう講義が準備されており,これらの講義を通して,新しい機械システムを創造することを体験する. さらに,機械工学の応用として宇宙工学関連の講義が充実していることも学科の特徴である.具体的には,2年後学期から4年前学期にかけて,宇宙工学基礎,宇宙システム工学,宇宙開発工学,ロケット・飛翔体工学という一連の講義が行われ,広い分野にわたって宇宙工学を学習する.


図1 機械宇宙学科の主な教育

 また,機械宇宙学科では来年度からカリキュラムの改定を行うべく,現在精力的な作業をおこなっており,自ら考えること,新しい考え方や概念を自ら提示すること,プレゼンテーションを行うことにより自分の考えを論理的に説明することなどを目的とした講義(少人数ゼミを検討している)を導入する予定である.これにより,学生諸君に「指導的エンジニア」としての資質を習得してもらいたいと考えている.

 以下に機械宇宙学科の特徴である,創造性教育と宇宙関連の講義の詳細について説明する. (機械宇宙学課程の「学部学習案内及び教授要目」も参照してください.)

(1) 機械創造基礎 (2年次前期)

 問題の本質を直感的に感知できるいわゆるエンジニアリングセンスは,特に機械系では「もの」をできる限り触る「触学」により修得できると我々は考えている.機械創造基礎は,企業からの寄附による多くの種類の機械を数人の学生グループあるいは各人に与えて分解させ,その内部機構,機能,材料,加工法等を企業からの講師が説明し,最後に組立てるという作業を行う講義である.本講義はエンジニアリングセンスの育成と同時に,その後に学ぶ工学理論の適用例を体感させ学習意欲を喚起することも目的としている.

(2) メカトロニクス(2年次後期)

 簡単な減速機付小型モータのサーボ系を学生一人一人に貸与し,また基本電子部品の選定・購入を自ら行い,アナログ電子回路からデジタル電子回路,センサ情報入力,モータ制御等を実際に作製させることにより機械を制御するシステムを体感する教育を行っている.

(3) 機械創造(3年次前期)

 この講義は,約4名のグループで自由な形態のロボットを協力して仕上げさせることによって,創造的なモノづくりの過程を体得させることを目的としている.本講義においては,以下のような過程に従って学習する.最初に与えられる課題は「観客に受ける芸をするロボットを作れ」という曖昧なものである.まず始めに,グループ内で協議し意見を調整しながら,製作するロボットの企画をまとめる過程を学ぶ.ついで,それを実現するための具体的な機構と制御系の設計過程,試行錯誤を繰り返しながら考案したロボットを作り上げる過程,さらに感性を発揮しながら観客に受けるための飾り付けを行う過程,最終発表会である「大道芸ロボット大会」において次年度の製作者である本学科2年次学生を主体とした観客を前にしてプレゼンテーションを行い評価を受ける過程,最終的に製作してきたロボットの諸資料をまとめるドキュメンテーションの過程である. このように,本講義ではもの作りの全過程を効率的に体験させることで「指導的エンンジニア」としての資質を教授しようとしている.また本講義は,機構,電子回路,制御ソフトを含む総合技術の基礎を教授すると同時に,もの作りに必要な図面を用いた設計の重要性を認知させ,次学期に学ぶ設計製図のための原体験を与える講義ともなっている.

大道芸ロボット大会の様子
写真1 大道芸ロボット大会の様子

(4) 機械宇宙設計製図(3年次後期)

 本講義では,後期の4単位という著しく短い期間で「設計」の精神を教授するため,独特の教育システムを導入している.設計以外に製図教育も不可欠であるため,製図の基本的なルールの指導も行っているが,その時間は出来る限り凝縮している.本講義の大多数の時間は,企業で抱えている具体的な設計問題を提示し,同時にその周辺条件や制約条件を詳細に説明し,その課題仕様を満足する機械システムを学生が考案し,それを具体的に設計図面にまとめる.本講義では,このような独特な講義体系の導入により,著しく短期間に設計のエッセンスを教授可能にしている.

(5) 宇宙工学関連講義(2年次後半〜3年次後半)

 厳しい宇宙環境の中で孤立閉鎖系として機能する宇宙機械システムの実現に不可欠な,独創的な発想と徹底した解析,システム設計,検証実験,厳格な管理がなされた製造プロセスなど,極限的なもの作りの典型を講義するとともに,より広範な工学分野への応用力を養う.宇宙工学関連の講義は基礎的項目を系統的に講義演習する「宇宙工学基礎」,「宇宙システム工学」及び「ロケット・飛飛翔体工学」と宇宙開発事業団連携講座の教員により最新宇宙プロジェクトの現場を教授する「宇宙開発工学」で構成されている.これらの講義では,学術的な宇宙工学のみならず,宇宙工学上のノウハウ,大規模システムを成立させるための企画の発案,財政当局との折衝,開発メーカのコントロール,スケジューリングの勘所,宇宙ビジネスの逸話なども含め,宇宙への興味を喚起すると同時に,企画,設計,製作,管理という一連の「もの作り」過程の運用法を具体的に教授している.



      III. 卒業後の活躍分野   

 本学科では,卒業後大学院に進学してさらに高度の専門知識の修得を目指す学生が多く,平成8年度〜平成12年度の5年間の卒業生のうち約90%が大学院修士課程に進学している.進学者の多くは,本学の機械物理工学専攻,機械制御システム専攻,機械宇宙システム専攻,情報環境学専攻(機械系),創造エネルギー専攻,メカノマイクロ工学専攻(精密工学研究所)等に進学している.基礎工学を重視した本学科のカリキュラムを修得した学生は,4年間の修学だけで十分社会の要請に応じうるものであり,工業界の各分野で活躍している.また,修士課程進学者のうち約10%が博士課程に進学することも本学科の特徴の一つである.本学科卒業生の主な就職先は,三菱重工業,三菱電機,東芝,日立製作所,トヨタ自動車,ホンダ技研工業,石川島播磨重工業,松下電器産業,ソニー,川崎重工業,荏原製作所,富士通,NEC,ヤマハ発動機,宇宙開発事業団,航空宇宙技術研究所,東京工業大学,東京大学,九州工業大学などである.

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2003/10/23 更新

E-mail: mes-www2@mes.titech.ac.jp